NEW

大学・学校関係者向け勉強会「AIが変える、業務における学生とのコミュニケーション」レポート

others

2025年10月10日、大学・学校関係者を対象とした勉強会「AIが変える、業務における学生とのコミュニケーション」を開催しました。

当日は大学職員や専門学校、予備校などの教育機関担当者が一堂に会し、AI活用による学生対応の未来や課題について活発な議論が交わされました。

本勉強会では、大学や専門学校などで実際に導入されているAIチャットエージェントの事例を共有し、教育現場における実践的なAI活用について考察しました。

本記事では、当日の発表内容の一部をダイジェスト形式でお伝えします。

学内DXをどう加速させるか――PKSHAが取り組む大学支援の最前線

勉強会の冒頭では、AI Knowledge & Communicationカンパニー カスタマーサクセス本部 本部長の東海より、PKSHAの概要と大学向けソリューションのコンセプトを紹介しました。

東海からは「PKSHAでは、“未来のソフトウエアを形にする”をミッションに掲げ、社会課題を解決するAIおよびAIソリューションを展開しています。特に大学分野においては、教職員の問い合わせ負荷を軽減しながら、学生サービスを向上させる事例が増えてきています」と語り、大学支援の背景を概説しました。

続いて、フィールドセールス部 リーダーの阪納から、具体的なAIソリューションの紹介を行いました。「PKSHA AI ヘルプデスク」を中心に、大学内の問い合わせ対応をMicrosoft Teams(以下Teams)上で効率的に行う手法、議事録アプリ「YOMEL」を活用した会議内容の自動テキスト化と要約、FAQ構築ツールの応用、さらにはAI面接支援まで、幅広いラインナップが示されました。

「たとえば在学生や受験生から寄せられる多数の問い合わせを、まずAIで一次対応することで、人の判断や共感が求められる問い合わせに人的リソースを集中させることができます。Teamsと連携することで、新入生や保護者からの質問も集約でき、担当部門への引き継ぎも円滑になります。」

実際に「PKSHA AI ヘルプデスク」を導入してからは、全体の6~7割を自動応答で解決できた事例も挙げられ、参加者からは「学内の問い合わせが以前より複雑化しているので参考になる」「Teams連携は非常に有用そうだ」などの声が上がりました。

学生対応のDXが進む、大学現場で広がるAI活用の最前線――龍谷大学・明星大学に見る、問い合わせ対応改革

続いては、実際に「PKSHA AI ヘルプデスク」を導入している大学の担当者による事例共有が行われました。

まずは龍谷大学の齊藤氏が、共通窓口の大改革を通じてチャットボットを導入した経緯や運用結果をシェアしました。

「教学支援部という新しい部署を立ち上げ、学生の問い合わせを一元的に受け止める体制にしました。履修登録時期や成績確認方法など、学生から何度も同じ基本的な質問をされることがとても多い。そこをチャットボットに任せようと考えました。導入後は、チャットボットへの問い合わせ全体の3分の1ほどが自動応答で解決できました。夜間や休日、窓口が閉まった時間帯に利用される割合が高いのも、メリットだと感じています。」

運用上の課題について問われると、齊藤氏はこう語ります。

「メンテナンスですね。毎日蓄積される“解決しなかった質問”を見て、新しいQ&Aを作る作業は欠かせません。私は週に1回程度、自分で振り分けをしていますが、属人化をどう防ぐのかは永遠のテーマです。でもやってみると、どんな問い合わせが増えているか可視化されるので、結果的に“学生の知りたいこと”を把握しやすくなりました。」

次に登壇した明星大学の月吉氏が語ったのは、Teams運用とチャットボットを組み合わせた際のエピソードです。

「学生とのやり取りが“リアルタイム”になり、質問してすぐ回答が返ってくることに学生自身も驚いていました。学生の疑問や不安にリアルタイムに対応することは、学生満足度の向上に直結します。
従来メールでやり取りしていた頃は、返信ラグがあって、誰が回答しているかも曖昧になりがちでしたので、AI+有人チャットの組み合わせは想像以上にスピーディで学生満足度の向上にも繋がっていると思います。チャット履歴から、学生ニーズを把握することができる点も想定外の効果でしたね。学生支援の質を継続的に向上させることに繋がります。」

導入後の成果についても月吉氏はこう語りました。
「本学では教務、学生支援、財務、情シスなど9部署で同時に導入したのですが全学的な連携で、電話の問い合わせも減り、学生対応の質と業務効率を同時に向上することができたのは大きな成果です。

元教務担当としての経験を活かして、チューニングやレクチャーを行い、現場主導での工夫と実行力のおかげでスムーズな定着を実現することができました。」

グループワークで見えたAI活用のヒント

午前のセッション終了後、参加者はグループに分かれてワークショップを実施しました。テーマは「学校におけるコミュニケーションの最適化戦略」として、各テーブルにはPKSHAのスタッフも加わり、活発なディスカッションが展開されました。

それぞれのテーブルでは、多くの大学が「学生が適切な問い合わせ先を見つけられず、結果としてたらい回しになる」という悩みを抱えていることが明らかになりました。まずはチャットボットで基礎的な問い合わせを一元化し、必要に応じて担当部署へ引き継ぐことを検討している大学が多かったことが特徴です。

また、あるテーブルでは、保護者からの問い合わせに対する電話依存が大きい点も議題となりました。「公式LINEなどを用意して誘導したほうが、学内の窓口が混乱しにくくなるのではないか」といった具体策が提示されました。

AIと人の連携が生む、新しい教育現場のコミュニケーション改革――湘南美術学院・摂南大学に見る、効率化と温かさの両立

グループワーク後には、湘南美術学院の佐藤氏が登壇し、電話窓口を廃止してチャットボットに一本化した大胆な事例を紹介しました。参加者の多くは大きな驚きを示し、AIチャットへの積極的な誘導を行う運用手法に強い関心を寄せました。

湘南美術学院では、受付スタッフが日々の電話・メール・窓口対応に追われ、入塾希望者や保護者からの問い合わせ対応だけで精一杯の状況でした。そこで「美術の裾野を広げる」という理念を実現すべく、あえて電話対応を廃止しチャットボットに一本化する施策に踏み切ったといいます。導入当初は「温もりのあるコミュニケーションが失われる」「入学希望者数が減るのでは」といった反対意見があったものの、チャットで解決できなかった場合は、個別メール対応へ誘導する仕組みによってリスクを抑制し、スタッフは新規事業企画や広報をはじめとする戦略的業務にリソースを振り向けられるようになりました。

導入後はユーザーの検索ワードや質問内容を分析し、ホームページやFAQを改善。佐藤氏は「第一報の問い合わせをすべてチャットボットに集約することで、以前は見逃していたアイデアや課題を掘り起こせた。入塾者数へのマイナス影響はほぼなく、スタッフ全体が学生を手厚くサポートできるようになったのが大きい」と述べ、学院内でも徐々に理解と評価が高まっていると強調しました。

また、摂南大学の嶺本氏は、AIチャットボット導入から1年半の運用状況を報告しました。「想定外の問い合わせにも対応できる一元管理が非常に有用で、メール問い合わせが半減した結果、スタッフの負担軽減に繋がった。また、夜間や休日を含め、学生が知りたいときにすぐ情報を得られるのも大きなメリットで、学生サービスの向上が達成できている。1日の最大有人チャット対応は十数件程度なので、想定以上に混乱が少なく、むしろ効率化が進んだ」と発表しました。

同大学では「鬱(うつ)」「ハラスメント」などネガティブワードが入力された場合に担当者へアラートが送信される試験運用も行われており、健康相談やメンタルケア体制と合わせ、早期発見に役立てる考えです。嶺本氏は「運用ルールをさらに最適化しながらこの仕組みを拡充していきたい。学内の別部署や専門スタッフとの連携を広げ、学生のSOSをいち早くキャッチできる態勢を整備したい」とコメントし、学内DXとの相乗効果にも期待を寄せました。

PKSHA Technology カスタマーサクセス マネージャーの竹内は、「私たちは『人とAIの共進化』をビジョンとし、問い合わせ対応を単なるルーティンワークで終わらせず、学内の変革を加速させる起点にしていきたいと考えています。今後も皆様と共に、新しい価値を創り出していけることを楽しみにしています」と総括し、勉強会を締めくくりました。


本勉強会では、大学・専門学校・予備校など、さまざまな教育機関が直面する問い合わせ対応やコミュニケーションの課題に対し、AIの活用がもたらす新たな可能性を探りました。各登壇者の事例紹介や質疑応答、ワークショップを通じて、単なる業務効率化にとどまらず、学内DXや学生支援を包括的に進めるうえでのアイデアや留意点が浮き彫りになりました。

参加者からは、より幅広い部署・業務への展開に期待する声が多数上がり、新たな連携や情報交換のきっかけともなっています。

PKSHAは、今後も教育機関をはじめとする多様なパートナーとの協力体制を強化しながら、「未来のソフトウエアを形にする」というミッションのもと、今後とも大学現場の問い合わせ対応や学内DXを支援してまいります。

  • Top
  • News
  • 大学・学校関係者向け勉強会「AIが変える、業務における学生とのコミュニケーション」レポート